いつもヒーローズ東京をご愛顧いただきまして誠にありがとうございます。店長の藤田です。
当店は現在、ご予約をWebの予約システムに一本化しており、お電話でのご予約を承っておりません。
「電話のほうが早いのに」と感じた方もいらっしゃると思います。今日は、なぜ電話予約をやめたのか——その裏で実際にあった検討の経緯も含めて、正直にお話しさせてください。
発端は、人手不足でした
格好をつけずに言えば、始まりは人手不足です。
電話予約を維持するには、営業時間中、電話の前に人を置き続ける必要があります。ところがこの業界、電話番ひとつ採用するのも簡単ではありません。お客様の名前やご利用状況という、極めて繊細な個人情報を扱う仕事です。誰でもいいというわけには、絶対にいきません。
信頼できる人材は限られ、電話対応は常にぎりぎりの体制で回っていました。
「女性スタッフを採用する」という案がありました
そこで店の中で出たのが、電話対応に女性スタッフを採用するという案です。
採用の間口は一気に広がります。それだけではありません。個人情報保護の観点でも、理にかなった案でした。ゲイコミュニティは、皆さんご存知の通り狭い世界です。電話に出るスタッフがコミュニティの中の人間であれば、「声で気づかれるかもしれない」「どこかで顔を合わせるかもしれない」というリスクがゼロにはなりません。コミュニティの外にいる女性スタッフなら、その心配はほぼなくなります。
私たちは、この案にかなり本気で傾いていました。
お客様の答えは、明確でした
ただ、これはお客様の耳に直接触れる変更です。店の都合だけで決めるべきではないと考え、お客様アンケートを実施しました。
結果は、私たちの想定を超えていました。
「女性とは電話したくない」という声が、非常に多かったのです。
理由を読んで、頭を殴られたような気持ちになりました。この店に電話をかけるという行為は、多くのお客様にとって、自分がゲイであることを声に出して他人に伝える行為なのです。相手が女性であれば、なおさら口が重くなる。「それなら電話をかけない」とまで書いてくださった方もいました。
女性採用案は、白紙に戻しました。
そして、電話の現場で起きていたこと
もうひとつ、書くかどうか最後まで迷ったことを、書きます。
電話でのご予約を望まれるのは、スマートフォンの操作が難しいお客様です。
むしろ最近は、これまで他店をご利用になっていた「長年のウリセンファン」の方が、当店を選んでくださる機会が増えてきました。この業界を何十年も愛し、支えてきてくださった方々です。そうした皆様に選んでいただけることは、本当にありがたく、光栄なことです。そして、そういった方々こそが、おもにお電話でのご予約を望まれます。
ただ、正直に申し上げます。ここ数年、「言った言わない」の行き違いが、明らかに増えました。
ご予約の日時が違う。頼んだボーイが違う。そもそも電話をした覚えがない——。以前なら年に数件だったことが、頻繁に起きるようになりました。
はっきり書いておきたいのは、お客様に悪意があるケースなど、ほとんどないということです。電話という仕組みは、双方の記憶だけが頼りです。人間の記憶は、誰のものであっても、歳月とともに揺らぎます。私自身も例外ではありません。悪意のない行き違いが起きたとき、電話には何の記録も残っていない。お客様の記憶と、スタッフの記憶がぶつかるだけです。
電話予約のお客様の大半は、素晴らしい方、優しい方ばかりです。
お話口からも、きっと素敵にお仕事を頑張られてきたんだろうなという思いがうまれるほどです。
ですが、同時に最近こんな話もスタッフ間ででることがあります。
「〇〇様、少し痴呆が入ってきてしまったかもしれない」
あんなに素敵なお客様、いまもこんなに素敵なお客様なのに、
指名の日に現れない、電話したことを覚えていない、何度も同じ話を繰り返す…。
私たちからそれをお客様にご指摘することはできません。
これはお客様の尊厳を傷つけますし、スタッフも疲弊します。実際、この対応で現場はかなり消耗していました。誰も悪くないのに、誰かが傷つく。仕組みそのものが限界だと、認めざるを得ませんでした。
電話は、「読まなくていい窓口」になっていた
そして、もうひとつの問題。こちらは、少し耳の痛い話になるかもしれません。
当店のサイトには、料金、コース内容、厳守事項、注意書きを、かなり細かく書いてあります。読み物として面白いものではありませんが、あれは全部、過去に実際に起きたトラブルからお客様とボーイを守るために書いたものです。
ところが電話という窓口は、何も読まなくても予約できてしまう仕組みでした。
書いてあることを、最初からすべて口頭でお尋ねになる。スタッフは同じ説明を一日に何度も繰り返す。まるで、私たちを文句を言わずに答えるAIか何かのように——。ですが、電話の向こうにいるのは人間です。AIと違って、疲れますし、傷つきます。
藤田はそれに対しはっきりとNOを伝えてきましたので、私と口論になった方もかなりいらっしゃいます。
そして、本当に深刻なのはここからです。注意書きを読まないままご利用に至ったお客様は、当店のルールを知らないままボーイと会うことになります。規約で禁止されていることを悪気なく要求してしまう。「客なんだから」と横柄な態度をとってしまう。
実際にあった話をひとつだけ書きます。スタッフが「規約はお読みいただけましたでしょうか」とお尋ねしたところ、こう返されました。
「こっちはお前より30年以上ながく二丁目で遊んでるんだ!お前に言われる筋合いはない!」
30年。それは本物の重みです。私たちよりずっと長くこの街と業界を見てこられたことに、嘘はないのでしょう。
ですが、あえて書かせてください。当店の規約は、業界歴の長さで免除されるものではありません。あれは礼儀作法のテストではなく、いま当店で働いているボーイたちを守るための、現在のルールだからです。そして正直に言えば——「長く遊んでいる客の言うことは絶対」という昔ながらの空気こそ、ボーイたちを黙って耐えさせてきた、この業界の悪い部分です。私はそれを変えたくて、この店をやっています。
現場のトラブルを検証すると、その多くが「事前に読んでいてくだされば起きなかった」ものでした。ボーイを守るのは、店の仕事です。ルールを知らないお客様をボーイの前にお通しすることは、店として無責任だと考えるようになりました。
業界を縮めているのは、誰なのか
書きにくいことのついでに、もうひとつだけ書きます。
ウリセン業界は、縮小しています。店は減り、働き手はますます集まらなくなっています。「若者が根性なしになった」「時代のせいだ」という声もあります。ですが、現場に立つ人間として見える景色は違います。
この業界を縮めてきた原因のひとつは、一部のお客様の横暴です。
誤解しないでいただきたいのですが、長年のファンの皆様の大多数は、この業界を支えてきてくださった恩人です。それは間違いありません。ですがその一方で、「客だから」「長いから」を盾に、ルールを無視し、ボーイを人として扱わないお客様が、確実に存在します。
その横暴に耐えられず辞めていったボーイを、私は何人も見てきました。そして辞めた子は、仲間に言うのです。「あの業界はやめておけ」と。若い働き手が去り、新しい働き手が来ない業界に、未来はありません。ファンを名乗りながら、その振る舞いで業界の寿命を削っている——この矛盾を、誰かが言葉にしなければならないと思っています。
だから私たちは、ボーイを守るために店ができることを考え抜きました。行き着いたのは、ひとつの問いです。
本来、私たちが重視すべきお客様は、誰なのか。
答えは出ています。規約を読んでくださるお客様。ボーイを一人の人間として扱ってくださるお客様。業界歴の長さでも、声の大きさでもありません。当店はそういうお客様を最優先にする店であると、はっきり決めました。
電話予約の廃止は、その決意の表れのひとつです。
出した結論——記録と、「読んでから会う」仕組み
Webの予約システムは、ここまで書いてきた問題をまとめて解決してくれました。
それだけでなく、これまでにないスピード感で確定まで進めることが可能になりました。
まず、記録が残ります。いつ・誰を・どのコースでご予約いただいたか、すべて残ります。行き違いが起きても、記憶と記憶をぶつけ合う必要がありません。お客様と店が、同じ記録を見て確認するだけです。記録は、店を守るためのものではありません。お客様を守るためのものです。
そして、Web予約はご利用の前に規約と注意事項をご確認いただく設計になっています。読んでから、会う。この順番が守られるだけで、現場のトラブルは目に見えて減りました。ルールをご存知のお客様とボーイの間には、余計な衝突が生まれないからです。
そのぶん人間のスタッフは、人間にしかできない仕事——ボーイのケアと、ご来店くださったお客様への対応に時間を使う。当店の運営は一貫してこの考え方です。
どうか、ご理解ください
最後に、一番ご不便をおかけしている皆様へ。
長年ご愛顧くださったお客様を、置いていくつもりは毛頭ありません。一度覚えていただければ、電話より簡単で、電話より安全です。
電話予約の廃止は、お客様との接点を減らすためではありません。記憶ではなく記録で、口約束ではなくルールの共有で、お約束を交わすため。そして、この店で働くボーイたちと、彼らを大切にしてくださるお客様を守るためです。
厳しいことも書きました。気を悪くされた方もいらっしゃるかもしれません。それでも、見えないところで取り繕うより、理由をすべてお見せして頭を下げるほうが、当店らしいやり方だと思っています。
どうか、ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
いつもありがとうございます。今後とも、ヒーローズ東京をよろしくお願い申し上げます。
店長 藤田